ヤフーと旧ソニー不動産(現SREホールディングス)との共同事業で2015年から始めた、「おうちダイレクト」が6月30日をもってサービスを終了する予定だそうです。
サービス内容としては、売主がソニーの開発したAI査定を参考に自由に価格設定し、ヤフー不動産へ情報公開。
買主からの質問にも直接回答でき、買主からの反響があれば、旧ソニー不動産(現SREホールディングス)が仲介に入り、重要事項や契約書類類、融資手続きを行い、手数料は買主側からのみというサービスでした。
メルカリの不動産版のようなもので、商談が纏まれば不動産会社が介入し、契約書等の専門的な手続きを行うというものでした。
不動産オークションは、アイディーユーというベンチャー企業がその先駆者として展開、マザーズオークションというサービス名で美輪明宏さんを起用したTVCMで広告していたのを走りに、当時はオークションによる不動産売買は、理にかなう売買方法であるとして、マザーズオークションに遅れを取るまいと大手不動産会社が共同でAUC’Sというサービスをはじめると、アメリカのネットオークション会社eBay(イーベイ)も日本に上陸、不動産オークションに参入してきました。
また、一時期、ピタットハウスも同様の入札方式で販売していたこともありました。
ところが当時の不動産オークションは、日本の取引慣行にそぐわず、根付くことはありませんでした。
競売という不動産の購入方法が有ります。
これも不動産オークションの1つですが、大きな違いは、競売の場合は、現況のままでの購入、ノンリターン、ノンクレームでの売却となるので、不動産知識のある程度ある人であれば、「安く買える」という買主のインセンティブが有ります。
今までの不動産オークションが根付かなかったのは、主導権が売主側に有り、高く売りたいという意思が働いていることから買主側のメリットが感じれないからではないでしょうか。
オークションが成立するためには、買手側のプレーヤーが競い合うほど多数存在する必要です。
ヤフーオークションや車のオークスションの様に、物品であれば、品質のパラメーターは少なく、買主が判断しやすく、プレーヤーが多数集まるのですが、不動産になると、引き渡し時期、立地、リフォーム状況、法規制、修繕履歴等々、不確定要素が沢山あり、まして高額な買い物で、失敗できない思いから買主側が、結局、売手買手ともそのサポート(仲介)のもとで不動産取引をすることを選ぶのではないかと思います。
スタート価格を1円にしたら、ある程度買手は集まるものと思われますが、売主の期待値まで届くことは少ないはずです。
不動産オークションの成立させるには、全ての不動産を売りたい売主に広げるのでなく、「多少安くなっても良いので、現況のままで、早く、確実に売りたいという売主」や、銀座の1等地のビルや有名な建築家の建てた不動産等、絵画や美術品のような1点物で、保有することそのものが価値になる、市場に出にくい不動産等、売主買主のニーズを細分化したマッチングの仕組み作りが必要ではないかと思います。